にゃんこフェスタ
「いつかさよなら 僕は夜に帰るわ 何もかも忘れてしまう前に」
少し切ない、ギターのゆっくりとしたストロークとともに、少し高めの絞り出すような声が歌い出す。
8ビートのドラム、ゆるやかになだらかに動くベースと、ゆっくりとしたストロークのギターに乗る16分の柔らかな電子音の一定な動き。
「去年と同じ服を着ていたら 去年と同じ僕がいた
後ろめたい嘘や悲しみで 汚れたシミもまだそのまま」
バスドラムのゆったりとしたビートに合わせて、鬱々とした静かな心象を聞く。
その中で少しずつ、ハイハットやタム、細かい音が増えていく。
2メロやブリッジを通して、ギターの歪み、電子音が少しずつ存在感を増して、盛り上がりを予感させる。
2サビの終わり。
突然すべての音が消え、現れるのはスタッカートのピアノ。
それまで柔らかな電子音が担当していた16分のスピード感を、フラットに叩く。
「ゆらゆら揺れる水面の月 忍ぶ足音 気配がした」
ナイトフィッシングが始まる。
バスドラムとスネアのコンビが2倍のスピードになって、ハイハットは軽薄な裏打ち。
トゲのある電子音が低音から高音まで跳ね、歪んだ重いギターが2本小気味よく絡み合う。
まだナイトフィッシングは始まったばかり。
8分のリズムのみでやりとりされる、強いて抑えられたテンションを聞く。
ふたたびスタッカートのピアノと、複数の厚い声
「ラララ きっと僕が踊り暮れる夜の闇に隠れ潜む
ラララ ずっと僕が待ち焦がれる恋のような素晴らしさよ」
バスドラムが、何かを連れてくる。
「いつかさよなら 僕は夜に帰るわ 何もかも忘れてしまう前に」
ハイハットは16ビートを刻み、ベースはオクターブで跳ね、ゆっくりとしたストロークのギターに乗る"8分の"柔らかな電子音の一定な動き。
爆発したハイに委ねて、前向きな言葉を叫んで夜がふける。
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こういう、少しずつよい緊張を重ねていっていい方に爆発させるという時間、なかなかないんですよね。
鬱々とした中で、薄暗いところに座って 、水面を見つめて、流れる水の音やリールの音を聞いて、適度な集中とともに、えもいわれぬ恍惚とした時間を過ごす。
"鬱々とした中で"も全部まるっと含めて、夜釣りというものをやってみたくなる、よい愛の歌だと思うのです。
これを聞いて抱く感情が、私の中で一番「エモい」という言葉にマッチしている気がします。
※全部書いてから動画を探して、初めて動画を見たので、ナイトフィッシングが始まるとか言って公式はほぼ全編通して釣りしてたり、ナイトというより夕方くらいの感じだったりしてますが、優しい気持ちで読んで、優しい気持ちで聞いてください。